羽翅はがい)” の例文
どうかするとその彼の背後うしろへ来て、彼を羽翅はがいで抱締めるようにして、親しげに顔を寄せるものがある。それが彼の妻だ。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その時も私の方から、御褒め申せば、もう何よりの御機嫌で、羽翅はがいひろげるように肩を高くなすって、御喜悦およろこびは鼻の先にも下唇にも明白ありあり見透みえすきましたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
奥さんは聞かなくても可いことをって聞いたという顔付で、やや皮肉に笑って、復た子供と一緒に鶏の方を見た。淡黄な色のひなは幾羽となく母鶏おやどり羽翅はがいに隠れた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御客様はそで口を指で押えて、羽翅はがいのようにひろげて見せました。にわかに思直して
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
雛鳥ひなどりのためにえさを探す雄鶏おんどりであるばかりでなく、同時にまたあらゆる危害から幼いものを護ろうとして一寸ちょっとした物音にも羽翅はがいをひろげようとする母鶏の役目までも一身に引受けねばならなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)