羽撃はばたき)” の例文
……だが、正三はやはり頭上に被さる見えないものの羽撃はばたきを、すぐ身近かにきくやうなおもひがするのであつた。
壊滅の序曲 (新字旧仮名) / 原民喜(著)
そいつが羽撃はばたきをして、ぐるりぐるりと障子に打附ぶッつかってい廻る様子、その動くに従うて、部屋の中の燈火ともしびが、あかるくなり暗くなるのも、思いなし心持のせいでありましょうか。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
羽撃はばたき聞えて、鷲はさっと大空から落ちて来た。頂高く、天近く、仰げば遥かに小さな少年の立姿は、狂うがごとく位置を転じて、腕白く垂れたお雪の手が、空ざまに少年のかしらに縋ると見た。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)