羲之ぎし)” の例文
羲之ぎしの書をデモ書家が真似したとて其筆意を取らんは難く、金岡の画を三文画師が引写にしたればとて其神を伝んは難し。小説を編むも同じ事也。
小説総論 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
羲之ぎしを学んで能書の聞こえ高かりし物徂徠ぶつそらい(荻生徂徠)の如きも過去にもあるにはあるが、良寛の如き美しき芸術性は具わらず、超凡というところまでは行かなかった。
良寛の書 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
羲之ぎしの書と称せられているものは、なるほど多くの人の言う通り清和醇粋じゅんすいである。
書について (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
日和ひよりのいい時、気分の晴れた時には、日当りのいい書斎の、窓の明るい、机のきれいな上に、佐理さり行成こうぜいだの、弘法大師だの、或いはまた羲之ぎし献之けんしだのを師友としているところを見れば
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
世に羲之ぎしを尊敬せざる書家なく、杜甫とほを尊敬せざる詩家なく、芭蕉ばしょうを尊敬せざる俳家なし。しかも羲之に似たる書、杜甫に似たる詩、芭蕉に似たる俳句に至りては幾百千年の間絶無にして稀有けうなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)