緘默かんもく)” の例文
新字:緘黙
そして、あたりは、死の緘默かんもく、荒凉たる曠野の寂寞であつた。此處にゐた人々に宛てた幾通かの手紙に、一本の返事も來なかつたのに不思議はない。
わたくしは此最後の丹後、眞志屋の鑑札をびて維新前まで水戸邸の門を潜つた最後の丹後をまのあたり見て、これを緘默かんもくに附するに忍びぬからである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
緘默かんもくうちに無量の深祕あるをば、その時にこそ悟り侍りしかといふ。側にありし例の猶太ユダヤ婦人は、長き紗もて面を覆ひたれば、今までそれと知らざりしに、優しく我に會釋しつ。
じやくとした一座、兎もすれば、滅入めいるやうな緘默かんもくが續きさうでなりません。
あの眞夜半の囁聲や山彦やまびこが前に消えてしまつたと同じに、靜けさと緘默かんもくとの中に消えてしまふもの、單なる聲や幻とより外にはなか/\考へることが出來なかつたことを
萬兵衞は深く暗い緘默かんもくちます。
マァシュ・グレンの彼方の丘がかすかに答へ返した——「何處にゐらつしやるのです?」私は耳を澄した。風がもみの木の間にかすかに音を立てた。あらゆるものは曠野の寂寞と深夜の緘默かんもくとであつた。