緇衣しい)” の例文
おおこれらすべての司祭輩よ! 陛下がこれら緇衣しいの手より我らを解放せらるる時にあらずんば、伯爵よ、事みなそのよろしきを得じ。
退けばすなわ緇衣しい香烟茶味こうえんちゃみ、淡然として生を終り、栄国公えいこくこうおくられ、そうを賜わり、天子をしてずから神道碑しんどうひを製するに至らしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
緇衣しい紅裙こうくんとは京都の活ける寶物である。この二ツのものがなかつたなら現在の京都は正に冷靜なる博物館と撰ぶ處なきに至るであらう。
十年振:一名京都紀行 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
円頂緇衣しいに太刀を帯びて戦闘に従事した僧兵なるものの中にも、本来は三善清行のいわゆる課役を避けて身を沙門に托した社会の落伍者等の
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
緇衣しいを解いて衣桁いこうにかけ、それからさぐりさぐりに、夜具に向って合掌した後に、軽やかに、その中にくるまって、左の脇を下にして横になり、その法然頭をくくり枕の上に落しました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)