経師きょうじ)” の例文
旧字:經師
芳古堂は表具ひょうぐ経師きょうじとで、格も高く、手堅いので知られていた。先代からのきまったとくい先と、当代知名な五、六人の書家や絵師。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのほか、鍛冶かじ石工いしく、左官、錺師かざりし経師きょうじなどにいたるまで、天下の工人の代表的な親方はみな腕のきそいどころと一門をすぐって来ていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
活版屋、経師きょうじ屋、小行商人、本屋の小僧、代言人の書記、ある政治家の秘書、新聞記者。……そしてどの職業にいても、彼は何かの方法を講じて熱烈に勉強した。
おなおさんの家は経師きょうじ屋であった。手もとが暗くなったので、そろそろと仕事をしまいかけていたお父さんは、あわただしく駈け込んで来たおなおさんを叱りつけた。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
犬は三日飼うと三年恩を忘れないというが、犬は好きで十二、三歳頃、本所相生あいおい町の経師きょうじ屋の伯父の家に奉公している時分に、雑種の犬を一匹拾ってきて伯父に叱られたことがある。
(新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
明治二十年ごろの平均賃金が、大工、左官、石工などで二十二、三銭(日給)、船大工、染物職などは十七銭、畳屋と経師きょうじ屋などが二十一銭ぐらいで、一番高いのが、洋服仕立の四十銭だ。
一人はゲランという経師きょうじ屋だった。気まぐれな勝手な働き方をしていたが、しかし非常に器用だった。