紺糸こんいと)” の例文
八五郎が持つて來たのは、紺糸こんいと柄卷つかまきをした、手頃の脇差が一とふり。血だらけの拔刄ぬきみのまゝで、その血がにかはのやうにねばり附いてゐるのも無氣味です。
紺糸こんいと黒皮くろかわのよろい、白地きんらんの陣羽織、かぶとは鹿のつのの前立ち、それを背投げに負い、かしらは、なお癒えぬ戦傷を、まるで白頭巾しろずきんのように、頬へかけて、巻いていた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前の広庭には高い物干し竿が幾列いくならびにも順序よく並んでいて、朝から紺糸こんいとがずらりとそこに干しつらねられる。糸を座繰ざぐりの音が驟雨しゅううのようにあっちこっちからにぎやかに聞こえる。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
受取つて見ると、成程手頃な脇差で、溝泥どぶどろで滅茶々々になつて居りますが、つばから上は大して汚れず、紺糸こんいとを卷いた柄には、ベツトリ血がこびり附いて居ります。