節約しまつ)” の例文
その水も洗面用の給水を晝の間に節約しまつしておかねばならないのであつた。呑んだ水はすぐにねつとりとした脂汗になつて皮膚面に滲み出た。
(旧字旧仮名) / 島木健作(著)
種吉の留守には、お辰が天婦羅を揚げたが、お辰は存分に材料を節約しまつしたから、祭の日通り掛りに見て、種吉は肩身の狭い想いをし、鎧の下を汗が走った。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そして起き上ると薬鑵やかんの口から生ぬるい水をごくごくと音をさせてんだ。その水も洗面用の給水を昼の間に節約しまつしておかねばならないのであった。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
もうこれ以上節約しまつの仕様もなかったが、それでも早くその百円を取り戻さねばならぬと、いろいろに工夫した。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
家へはいると、安二郎は風呂銭を節約しまつしての行水で、お君は袂をたかくあげて背中を流していた。それが済むと、お君が行水し、安二郎は男だてらにお君の背中を流した。
青春の逆説 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
よろいを着ると三十銭あがりだった。種吉の留守にはお辰が天婦羅を揚げた。お辰は存分に材料を節約しまつしたから、祭の日通り掛りに見て、種吉は肩身かたみせまい想いをし、鎧の下をあせが走った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
門口の狭い割に馬鹿に奥行のある細長い店だから昼間なぞ日が充分じゅうぶんさず、昼電を節約しまつした薄暗いところで火鉢の灰をつつきながら、戸外の人通りをながめていると、そこの明るさがうそのようだった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そして白眼をむいている表情が生意気だとなぐられた。泣きながら一里半の道をとぼとぼ歩いて帰った。家へはいると、安二郎は風呂銭を節約しまつしての行水ぎょうずいで、お君はたもとをたくしあげて背中を流していた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
「人間は節約しまつせんことには、あかんネやぜ、よう聴いときや」
青春の逆説 (新字新仮名) / 織田作之助(著)