筑波颪つくばおろし)” の例文
「むむ、これから筑波颪つくばおろしでこの橋は渡り切れねえ」と、七兵衛はうす明るい水の上を眺めながら云った。「もうじきに白魚のかがり下流しもての方にみえる時節だ。今年もちっとになったな」
半七捕物帳:18 槍突き (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日はもうトップリ暮れて、筑波颪つくばおろしが、灰色の水を渡ってピューと吹き起ります。
お高は、ちょっともすそをからげて、草を分けて歩き出した。白い足に、きつねいろに霜枯れのした草の葉がじゃれついて、やるまいとするようにからんだ。本堂の屋根を、筑波颪つくばおろしがおどり越えてきた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
平生ふだん寂寥の田の中が急に賑わい盛るので、その夜景は不思議なものに見える。時候も今日のように冬に入る初めでなく、陰暦の十一月ですから、筑波颪つくばおろしがまともに吹いて来て震え上がるほど寒い。
日はもうトップリ暮れて、筑波颪つくばおろしが、灰色の水を渡ってピューと吹き起ります。