竣功しゅんこう)” の例文
余は暗きアーチの下をのぞいて、向う側には石段を洗う波の光の見えはせぬかと首を延ばした。水はない。逆賊門とテームス河とは堤防工事の竣功しゅんこう以来全く縁がなくなった。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まだ竣功しゅんこうしないうちにアメリカ軍の William Moultrie(一七三一—一八〇五)大佐がここに立てこもってイギリス軍を防いだので、その名が付せられた。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
笑フベキノ甚シキ者ナリ。ソモソモコレニ従事スル者ハ、精ト簡トノ要タルト、長ト短トノ異ルコトナキトヲ知レバ、すなわち始メテともニ詩ヲ言フベキノミ。近日余ガ『絶句抄』ノ梨棗りそう竣功しゅんこうス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「いつごろ、竣功しゅんこうの見込みかね?」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
岩見重太郎いわみじゅうたろう大刀だいとうを振りかざしてうわばみ退治たいじるところのようだが、惜しい事に竣功しゅんこうの期に達せんので、蟒はどこにも見えない。従って重太郎先生いささか拍子抜けの気味に見える。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)