稲垣いながき)” の例文
窮厄きゅうやくにおりながら、いわゆる喉元のどもと過ぎて、熱さを忘るるのならい、たてや血気の壮士は言うもさらなり、重井おもい葉石はいし新井あらい稲垣いながきの諸氏までも
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ところが、それが豪家の旦那でも何でもない。散々御取持をさせて置いて、ぷいと引揚げて行ってしまった。兄さんも不覚だったネ。稲垣いながきまで付いていてサ。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
西町奉行の佐佐は、両奉行の中の新参しんざんで、大阪に来てから、まだ一年たっていない。役向きの事はすべて同役の稲垣いながきに相談して、城代じょうだいに伺って処置するのであった。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お種は自分の生家さとを探すような眼付をして、四辺あたりを眺め廻した。実は留守、お杉は亡くなる、宗蔵はよそへ預けられている、よく出入した稲垣いながき夫婦なぞも遠く成った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)