磊砢らいら)” の例文
磊砢らいらたる岩間には高根菫岩爪草いわつめくさなどがわずかに寸青を点じている外は、植物は至って稀である。岩石の急坂を登って雄山祠前の突端へ出た。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
針木峠の行路難は実に磊砢らいらたる巨岩の錯峙した籠川の河床を辿りて、雪を噴く奔湍と、雷のような音を立てる急瀬とを幾度となく徒渉することであった。
針木峠の林道 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
頂上は磊砢らいらたる嶄岩ざんがんの堆積であって、南北の二隆起に分れ、肉眼ではいずれが高いか判じかねるが、三角点は北の隆起に置かれ、其附近のみわずかに一しゃくの平地を存している。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
米栂こめつが、黒檜、白檜などが多少の偃松も交って、石楠しゃくなげ岳樺だけかんばなどの闊葉樹と共に、矮い灌木状をなして巨岩の上に密生しているさまは、磊砢らいらたる嶄巌ざんがんを錯峙させている南側よりも寧ろ私は好きである。
思い出す儘に (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)