確乎かくこ)” の例文
しかし仮にも一度さう思ひ込んだ以上は、何かそれをくつがへすだけの確乎かくことした反証を握り得ないまでは心の平静を見ることは出来さうもなかつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
むしろ博士は、世人が自分の説を疑うのを喜んだ。博士の説には確乎かくこたる論拠ろんきょが有るけれどその論拠を示さなかった。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
矢張やはり野蛮人にも及ばぬ猫のことなれば、その好む所の色は燃ゆるが如き赤色であるらしい、併し是れは確乎かくことしたことは言えないが、数回の調査は殆ど一致して居るから
猫と色の嗜好 (新字新仮名) / 石田孫太郎(著)
もっとも迫害などを恐れるようではそんな事は出来ないでしょう。そんな小さい事を心配するようでは、こんな事は仕切しきれないでしょう。其所そこにその人の自信なり、確乎かくこたる精神なりがある。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
在る可き山が在る可き処に確乎かくこと姿を曳きはへる
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)