碧巌録へきがんろく)” の例文
旧字:碧巖録
母はもう眠ったあとで、あやも寝間ねまへはいり、庄兵衛も自分の寝間で夜具にはいったまま、碧巌録へきがんろくの一冊を読んでいた。
十八条乙 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
無門関か碧巌録へきがんろくの公案からでも取材したのかナ。なんしろ「無」とあるから。凡骨はツマランことを考えるよ。しかし別段、花をいじっているわけではない。
安吾巷談:11 教祖展覧会 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
碧巌録へきがんろくに、泥牛でいぎう海に入つて消息なし、と云ふもの、乃ちこの境の妙諦めうていを教へて実に遺憾なし。あゝ泥牛海に入つて消息なし、しかも其消息や宇宙に遍満せる也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
知に止まる者はいつも信を見失うではないか。昔大慧だいえは禅が知に堕するのを恐れて、あの『碧巌録へきがんろく』を火に投じた。作家は一度彼が誇る知を火に投ずる勇気を持たねばならぬ。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
近頃碧巌録へきがんろくとか、無門関むもんくわんとかいつたやうな禅家の書物に、所謂いはゆる悟道を商売にしない、素人の学者、求道きうどう者が飛び込んで往つて新しい解釈を試みようとしてゐるのは面白い現象である。
禅が文字に堕した時、大慧は憤って「碧巌録へきがんろく」を焼き棄てたと云います。
民芸とは何か (新字新仮名) / 柳宗悦(著)