眼窩がんくわ)” の例文
迫り來るひもじさにグウ/\鳴る腹の蟲を耐へて澁面つくつた若者や、腰掛の上に仰向けになつてゐる眼窩がんくわの落窪んだ骸骨のやうなよぼ/\の老人や
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
鼻は尖つて、干からびた顔の皮は紙のやうになつて、深く陥つた、周囲まはりの輪廓のはつきりしてゐる眼窩がんくわは、上下うえしたの瞼が合はないので、狭い隙間をあらはしてゐる。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
大阪屋は、凹んだ眼窩がんくわの底に青白く光る目を、ぢつとおきみの面に注いでゐたが、やがておきみを無理に立たして座敷から廊下へ引き出した。その廊下は三度ほど曲つて、急に暗くなつた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)