眺入ながめい)” の例文
直行は又その辛し、恨し、悲しとやうの情に堪へざらんとする満枝が顔をば、ひそか金壺眼かなつぼまなこの一角をとろかしつつ眺入ながめいるにぞありける。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
窓に色硝子いろガラスなどをはめた湯殿には、板壁にかかった姿見が、うっすり昨夜ゆうべの湯気に曇っていた。お島はその前に立って、いびつなりに映る自分の顔に眺入ながめいっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ちりをだにゆるさず澄みに澄みたる添景のうちに立てる彼の容華かほばせは清くあざやか見勝みまさりて、玉壺ぎよくこに白き花をしたらん風情ふぜいあり。静緒は女ながらも見惚みとれて、不束ふつつか眺入ながめいりつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)