留南奇とめぎ)” の例文
と襟を圧えて俯向うつむいて、撥袋を取って背後うしろに投げたが、留南奇とめぎの薫がさっとして、夕暮のしき花、散らすに惜しき風情あり。辰吉は湯呑を片手に
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目前めさきみちがついたように、座敷をよぎる留南奇とめぎかおり、ほのゆかしく身に染むと、彼方かなたも思う男の人香ひとかに寄るちょう、処をたがえず二枚の襖を、左の外、立花が立った前に近づき
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)