由良之助ゆらのすけ)” の例文
由良之助ゆらのすけが春のや(逍遥)で、若狭之助わかさのすけが鴎外で、かおよ御前ごぜんが柳浪、勘平かんぺいが紅葉で、美妙はおかるよ。力弥りきやさざなみ山人なの。定九郎さだくろうが正太夫なのは好いわね。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
昨夜も判官はんがんは切腹に及んで由良之助ゆらのすけはまだかといっている時、背広服の男が花道を悠々ゆうゆうと歩いて、忠臣蔵四段目をプロレタリア劇の一幕と変化させた事だった。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
たとえば団十郎の由良之助ゆらのすけに、由良之助が見えず、団十郎が少しでも出て来た以上は、団十郎の恥だ。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
半作事はんさくじだと言うから、まだ電燈でんきが点かないのだろう。おお、ふたどもえの紋だな。大星だか由良之助ゆらのすけだかで、鼻をく、鬱陶うっとうしい巴の紋も、ここへ来ると、木曾殿の寵愛ちょうあいを思い出させるから奥床しい。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)