独身者どくしんもの)” の例文
最初私は独身ということを、大変愉快ゆかいのことのように感じていた。それは西洋の独身者どくしんものなどの生活を見たり聞いたりしていたからである。
独居雑感 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「家庭か。家庭もあまりくださったものじゃない。家庭を重く見るのは、君の様な独身者どくしんものに限る様だね」と云った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは無理もない、亡くなつた男は一生涯細君と戦争いくさを続けて来たのに、弁士は独身者どくしんもののやうに言つてゐる。
彼の言葉は独身者どくしんものの彼だけに言われるのに違いなかった。彼の友だちのY中尉は一年ほど前に妻帯していたために大抵たいてい水兵や機関兵の上にわざと冷笑を浴びせていた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ちょうど其の時、中村座に関係していた蔦芳つたよしと云う独身者どくしんものがいた。
幽霊の衣裳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼は独身者どくしんものであつた
「ぢや今一つ訊くが、君はまだ独身者どくしんものださうだが、ちよい/\女買ひはするかい。」
「僕はそんなに単純じゃない。詩人、画家、批評家、新聞記者、……まだある。息子むすこ、兄、独身者どくしんもの愛蘭土アイルランド人、……それから気質きしつ上のロマン主義者、人生観上の現実主義者、政治上の共産主義者……」
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)