“狗賓（ぐひん）” の例文
俗（よ）に言伝える。天狗（てんぐ）、狗賓（ぐひん）が棲（す）む、巨樹、大木は、その幹の肢（また）、枝の交叉（こうさ）の一所（ひとところ）、氈（せん）を伸べ、床を磨いたごとく、清く滑かである。
ピストルの使い方：――（前題――楊弓） (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
通例は天狗・狗賓（ぐひん）というのが最も有力なる嫌疑者（けんぎしゃ）であったが、それはこのように無造作なる示威運動に脅かされて、取った児（こ）をまた返すような気の弱い魔物ともじつは考えられていなかった。
山の人生 (新字新仮名) ／ 柳田国男(著)
羽黒の小法師（こほうし）、秋葉の行者（ぎょうじゃ）、二個は疑（うたがい）もなく、魔界の一党、狗賓（ぐひん）の類属。東海、奥州、ともに名代（なだい）の天狗（てんぐ）であつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) ／ 泉鏡花(著)
同国東部の美嚢（みの）郡などでは、迷子は狐でなく狗賓（ぐひん）さんに隠されたというが、やはり捜しにあるく者の中一人が、その子供の常に使っていた茶碗（ちゃわん）を手に持って、それを木片をもって叩いてあるいた。
山の人生 (新字新仮名) ／ 柳田国男(著)