牛輦くるま)” の例文
車寄くるまよせには、誰彼の参内の諸卿しょけい牛輦くるまが、雑鬧ざっとうしていた。舎人とねりや、牛飼たちが、口ぎたなく、あたりの下に争っている。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
箭四郎やしろう、箭四郎」供待ちへ、こう呼びたてて、範綱は、あわただしく牛輦くるまの裡へかくれた。そして、揺られゆく途々みちみちに、ふとまた、不安なものを感じてきた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「や……有範が」そんな予感があったように、範綱は、すぐに、牛輦くるまを引っ返して、日野の里へいそがせた。病室は、しいんとしていた。胸さわぎが先に立った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)