片々きれぎれ)” の例文
停車場ステーションで車をやとってうちへ急ぐ途中も、何だか気がいらって、何事も落着いて考えられなかったが、片々きれぎれの思想が頭の中で狂いまわる中でも
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
片々きれぎれに口にするところから推測してみると、とっくに切れてしまったはずのクルベーが、新橋の一芸者を手懐てなずけたとか、遊んでいるとかいうようにも聞こえたし、寄越よこすはずの金を
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
満足とともに新しい不安が頭をもたげてきた。倦怠けんたい、疲労、絶望に近い感情が鉛のごとく重苦しく全身を圧した。思い出が皆片々きれぎれで、電光のように早いかと思うと牛の喘歩あえぎのようにおそい。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
その夢のなかには、片々きれぎれのいろいろのものが、混交ごっちゃに織り込まれてあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)