「なるほどね、ひげって髪油を付けて、熨斗目麻裃のしめあさがみしもを着たところは捨てたものじゃあない、どうして三百石は安いもんだ」
主計は忙しい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
風呂に入り、月代さかやきり、髪をあげ、丸に九耀星の家紋の付いた熨斗目麻裃のしめあさがみしもを着せられた、彼はなにも云わず、人形のようにされるままになっていた。
野分 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「はい」小間使の八重は、熨斗目麻裃のしめあさがみしもを取り出していた。平三郎は、ぬうと立ったまま八重の手許てもとを見まもる、彼にはなぜ礼服を着てゆくかがわからない。
日本婦道記:小指 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
次に、安芸は熨斗目麻裃のしめあさがみしもを着け、出陣の熨斗を取って祝ったあと、玄関の式台前でまた酒肴を出し、留守の者から供をする小姓、かちの者たちにまで盃を与えた。
国老就任の挨拶なので、酒井家では老臣の関主税ちからが接待に出、兵部と甲斐とは熨斗目麻裃のしめあさがみしもに着替えた。
古い金屏風きんびょうぶをまわし、毛氈もうせんを敷いて、燭台しょくだいを二基。登は熨斗目麻裃のしめあさがみしも、まさをは白無垢むくに同じ打掛、髪は文金の高島田で、濃化粧をした顔は、人が違ったかと思われるほどおとなびてみえた。