照光ひかり)” の例文
家を出でゝ程久しきに、母も弟も還ること遅し、鴉はもりに急げども、帰らぬ人の影は破れしのき夕陽ゆふひ照光ひかりにうつらず。
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
其は深い焦茶こげちや色で、雲端くもべりばかり黄に光り輝くのであつた。帯のやうな水蒸気の群も幾条いくすぢか其上に懸つた。あゝ、日没だ。蕭条せうでうとした両岸の風物はすべての夕暮の照光ひかりと空気とに包まれて了つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)