焼灰やけばい)” の例文
燃え尽した書物がフィルムの逆転によって焼灰やけばいからフェニックスのごとく甦って来る。巻き縮んだ黒焦くろこげの紙が一枚一枚するすると伸びて焼けない前のページに変る。
雑記帳より(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかし、自分の懐かしい家は無くなり、美しい背広せびろも、丹精たんせいした盆栽ぼんさいも、振りなれたラケットもすべて赤い焼灰やけばいに変ってしまったことがハッキリ頭に入ると、かえって不思議にも胆力たんりょくすわってきた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)