焦燥いら)” の例文
それを知らない師直は、かれもおなじくこの謎を判じかねているものと見たらしく、やや焦燥いらだって来たようにその口髭をむしりながら催促した。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「さは文角ぬしにまで、かかる悪戯いたずらしけるよな。返す返すも憎き聴水、いで思ひ知らせんず」ト、みかかるをば文角は、再び霎時しばしと押し隔て、「さな焦燥いらちそ黄金丸。 ...
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
朋友とも想いの村上彦四郎は、八郎と彦七の身の上のことが、どうにも案じられてならないらしく、小山——と云っても丘ほどの小山を、上がったり下りたりして焦燥いらっていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しりえふりかえりて見れば、真白なる猟犬かりいぬの、われを噛まんと身構みがまえたるに、黄金丸も少し焦燥いらつて
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
果敢々々はかばかしきしるしみえぬに、ひたすら心を焦燥いらちけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)