滴々たらたら)” の例文
手の震えで滴々たらたら露散たまちるごとき酒のしずくくちなわの色ならずや、酌参るお珊の手を掛けてともしびの影ながら、青白きつやが映ったのである。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その最初の喧嘩けんかの際、汐田は卒倒せんばかりに興奮して、しまいに、滴々たらたらと鼻血を流したのであるが、そのような愚直な挿話そうわさえ、年若い私の胸を異様にとどろかせたものだ。
列車 (新字新仮名) / 太宰治(著)
続きて打込む丁々は、滴々たらたら冷かなる汗を誘いて、予は自から支えかぬるまでに戦慄せり。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鮮血なまちの、唇を滴々たらたらと伝ふをて、武士さむらいと屑屋はひとのめりに突伏つっぷした。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)