溲瓶しびん)” の例文
硯、紙などまた枕元に運ばせたれど一間半の旅行につかれて筆を取る勇気も出ねばしばし枕に就く。溲瓶しびんを呼ぶ。足のさきつめたければ湯婆たんぽに湯を入れしむ。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「婆さんどもまでが溲瓶しびんのものをわれわれの頭上にぶちまけるようになっては、とてもだめだ。」
小便がしたいのであろうと察し、溲瓶しびんを当ててみるが排尿しない。しきりにれているように見える。「おしっこですか」と云うと頷くので、また当ててみるが出ない。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
溲瓶しびんを洗いに行っていた波子が、その不恰好な醜態なガラス瓶をぶらさげてはいってきた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
これらの誤解を正さんには容体的記事もまた必要なるべきか、などさまざまに思ひわずらふ。溲瓶しびんを呼ぶ。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
溲瓶しびんを呼ぶ。『海南新聞』来る。中に知人の消息はなきやとひろげて見る。妹に繃帯ほうたい取換を命ず。繃帯取換は毎日の仕事なり。未だ取りかからざる内に怪庵かいあん来る。枕元のふすまをあけて敷居ごしに話す。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)