渓谷たに)” の例文
旧字:溪谷
山中には三水さんすいと唱える金性水きんせいすい竜毛水りゅうもうすい白毛水はくもうすいの清泉が湧き、五つの瀑布たきと八つの丘嶽おかとまた八つの渓谷たにとがあって、いずれも奇観だ。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
この時代ころのお茶の水といえば、樹木と藪地と渓谷たにと川とで、形成かたちづくられた別天地で、都会の中の森林地帯であった。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まだ渓谷たにには雪があったが、南へ向っている傾斜の崖には、朽葉の下からふきや若菜がわずかにえ出ていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このさちある渓谷たにをさまよいし人々は
西南へ下れば天龍峡となり、東北へ行けば、金森山と卯月山との大渓谷たにへ出るという郷で、その二つの山の間から流れ出て、天龍川へ注ぐ法全寺川が、郷の南をはしっていた。
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その低き渓谷たに御身おんみと逢わむ
緑いと濃きわれらが渓谷たに