浴衣地ゆかたじ)” の例文
と娘達は言い合って、流行の浴衣地ゆかたじを叔父の前に置いた。目うつりのする中から、思い思いに見立てて来た涼しそうな中形ちゅうがたを、叔父にめて貰う積りであった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
無事に左の路を通り抜けたものには、景品の浴衣地ゆかたじをやるといい、それをえさにして見物を釣るのであるが、十六文の木戸銭で反物をむやみに取られては堪まらない。
七夜には自身で水口へ出て来て、さかなを見繕ったり、その肴屋と医者とが祝ってくれたこいの入れてある盥の前にしゃがんで見たり、俳友が持って来てくれた、派手な浴衣地ゆかたじを取りあげて見たりしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「今日はさとの母が見えて、私、上等の浴衣地ゆかたじを戴きましたよ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
藍色の浴衣地ゆかたじの、袖がよれ、スリ切れた履物はきものが目立った。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
無事に裏木戸まで通り抜けたものには、景品として浴衣地ゆかたじ一反をくれるとか、手拭二本をくれるとか云うことになっているので、慾が手伝ってはいる者も少なくないんです