法螺吹ほらふ)” の例文
知己の者はこの男の事を種々さまざまに評判する。あるいは「懶惰らんだだ」ト云い、或は「鉄面皮てつめんぴだ」ト云い、或は「自惚うぬぼれだ」ト云い、或は「法螺吹ほらふきだ」と云う。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
すべての周旋屋に共通な法螺吹ほらふきであると云う真相をよく自覚していると云う意味なんだから、いくら知ってたって自慢にならないのは無論である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
法螺吹ほらふき、いかさまの、ペテン師の、この乾物屋の主人おやじのような奴ばかりうようよしている、これがマルセーユだ!
法螺吹ほらふきのくせに正直者の貴様には今までそれが見えなかっただけだ、と彼の頭は断定的に答えるのだ。彼はそしてその答えに一言もないような気がした。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
お前は僕を法螺吹ほらふきだと思っているのに違いない、お前は僕を信じないからだめだ、こんどは、ひどく調子づいて御自分の事を滅茶苦茶に悪くおっしゃいます。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
「世のなかにあンな法螺吹ほらふきあるもンですか。口から出放題のでたらめばかり言っちゃ、しょッちゅう皆をかついでる人じゃないの。そンな人の言うことでもやっぱりあんた信用する……?」
円太郎馬車 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「有るんでしょう。八木先生はそうおっしゃってよ。たしかに殿下様に化けたんだって、恐れ多い事だが化けて来たって——第一不敬じゃありませんか、法螺吹ほらふきの分際ぶんざいで」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「僕は君のような法螺吹ほらふきとは違うさ」と口髯くちひげひねる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)