沃度ヨード)” の例文
「おい、おい、やられたよ。誰か沃度ヨードホルムをもっていないか。過酸化水素はないか。やられた、やられた。」
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
何故なら、硫酸マグネシウムに沃度ヨードフォルムと抱水クロラールは、それぞれに、きわめてありふれた普通薬ではないか。検事も怪訝けげんそうに首をかしげて、つぶやいた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
葉子は息も絶えそうに呻吟うめいていたが、おもて背向そむけていた庸三が身をひいた時には、すでに創口きずぐちが消毒されていた。やがて沃度ヨードホルムのにおいがして、ガアゼが当てられた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私は一度、Tölzテルツ に行かうと思ひつつ遂にその念願を果さずにしまつた。Tölzテルツ はイーサル川の上流にある町で、沃度ヨード曹達ソーダ硫黄いわうを含んだ鉱泉がくために一つの浴泉地にもなつてゐる。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ただ逢痴の部屋から平素使う沃度ヨードの注射器を、拾い上げて来たのみであった。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
また、次の沃度ヨードフォルムには、嗜眠性の中毒を起す場合がある。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)