気狂きちがひ)” の例文
旧字:氣狂
彼には東京人の上手じやうずに立ち廻る社交術がたまらなかつた。彼は穀物の素朴そぼくさを思ひ出した。残りの日数の少ない点からも、彼の試験勉強は気狂きちがひじみたものだつた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
いそがしきシネマトグラフの中なれば、誰とわかねど突拍子とつぺしもなく現はれて気狂きちがひのごと
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おたあちやんは、気狂きちがひのやうに同じことを幾度も幾度も繰返して口ばしりました。
虹の橋 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
正気の自己じこの一部分を切りはなして、其儘の姿すがたとして、知らぬに夢のなかゆづり渡す方がおもむきがあると思つたからである。同時に、此作用は気狂きちがひになる時の状態と似て居はせぬかと考へ付いた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
熊のおツ母さんは気狂きちがひの様になつて
熊と猪 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
代助は今迄、自分は激昂しないから気狂きちがひにはなれないと信じてゐたのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)