歯黒はぐろ)” の例文
雀だけはちょうどお歯黒はぐろをつけかけていたところで、知らせを受けてすぐに飛んで行ったから、にあって母をよろこばせることができた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうしてつぎに……いや、それよりも、そうした木立の間から山谷堀の方をみるのがいい。——むかしながらの、お歯黒はぐろのようによどんだ古い掘割の水のいろ。
雷門以北 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
歯黒はぐろはまだらに生へ次第の眉毛まゆげみるかげもなく、洗ひざらしの鳴海なるみ裕衣ゆかたを前と後を切りかへて膝のあたりは目立ぬやうに小針のつぎ当、狭帯せまおびきりりと締めて蝉表せみおもての内職
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「へへへへ。」お糸婆さんは、お歯黒はぐろのはげた歯をむき出して、変な笑いかたをする。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
生まれがお宮参りに着るのをミヤマヰリゴ(美作みまさか)、女がお歯黒はぐろを始めてつける日に着るのがカネツケゴ(北美濃きたみの)、年寄が厄年やくどしの祝に着るのをヤクゴ(讃岐さぬき)というのを見ると
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
歯黒はぐろというものをむろん知っていたのだが、まだあのほっぺたの黒いまだらが、お歯黒のよごれだという話をいていなかったので、なお以前の桛掛雀かせかけすずめの話をもち伝えているものかと思われる。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)