欠点あら)” の例文
旧字:缺點
が、平生は至つて口少なな、常に鷹揚に構へて、部下したの者の欠点あらは随分手酷くやツつけるけれども、滅多に煽動おだてる事のない人であつた。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
同僚の仕事に欠点あらを見付けては、密かにそれを雇主に告げる習慣があって、其のため、教会へ行かない大工の間では、余り評判が好くなかったこともある。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
さまざまな栄耀栄華の幻影まぼろしが後から後からと頭にちらついた。が、詮じつめると、どれもこれも欠点あらがあって面白くなかった。その度ごとに彼は肩をゆすぶって
幻想 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
人の悪口や、欠点あら計り探す事はいけないと分れば、どんな時にでも、それはしまいと心に願いました。
いとこ同志 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
他人の欠点あらののしれば我身が高くでもなるような眺めかたで、彼女を不倫呼ばわりをして、そういう女のあったのを、女性全体の恥辱でもあるように言ってやまなかった。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
物事に迷易くていつも愚痴ばかりでは頼甲斐たのみがいのない様にもあり世智賢せちがしこくてかゆいところまで手の届く方は又た女を馬鹿にしたようで此方の欠点あらまで見透されるかと恐しくもあるし
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)