榾柮ほだ)” の例文
そこにはしい蜜柑みかんが茂っていた。猿は二人の頭の上を枝から枝へ飛び渡った。訶和郎かわろは野犬とおおかみとを防ぐために、榾柮ほだいた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そしてお父さまの膝に乘つかると、そのまま夕飯も食べない先に眠つてしまひます。臺所の圍爐裡ゐろり榾柮ほだべて家ぢゆうの者は夜を更かします。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
彼等は手に手に榾柮ほだをとり、ところかまわず大納言を打ちのめした。衣はさけ、飛びちる火粉は背に落ちたが、すでに、大納言は意識がなかった。
紫大納言 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
聲をかけはいつて行くと、熊吉は消えかけた榾柮ほだ火を前にしてうす暗がりのなかにひとりつくねんとして坐つてゐた。
黎明 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)