楮幣ちょへい)” の例文
「おかげで獄中におる多くの凡下ぼんげどもの首が救われました。あとは楮幣ちょへいの流通をさかんにしてみせるだけが、道誉の責任にございまする」
譔は烏老のいうことを聞いて、馬鹿馬鹿しくもあったが、正直な男だけに、楮幣ちょへいを焚いたがために貪欲漢を甦らしたということがぐっと癪に触った。
令狐生冥夢録 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
概してこれを論ずるに、聖賢くらいる間は、民選議院起らず。敵国・外患の迫らざる間は、民選議院起らず。外国人の金を貸す間は民選議院起らず。楮幣ちょへい通用する間は、民選議院起らず。
しかのみならず、御新政の楮幣ちょへいをば、ちょろまかしの紙キレとかすなど、怪しからん奴だ。もうゆるせん。さアこう来い
譔の頭には楮幣ちょへいを焚いたがために甦ったという烏老のことや、昼間に作って朗吟していた詩の文句などがいっぱいになっていた。譔は何かしら誇りを感じて得意になっていた。
令狐生冥夢録 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「でも……、見せしめの刑などをおこなわずとも、楮幣ちょへいの流通が円滑に相なるような、何かべつな一政策が、そちにはあると申すのであろうが」
みかど還幸かんこうの日となっても、建武の御新政始めには、御内帑ごないどのくるしさ、ひと方ならず、楮幣ちょへい(紙幣)を発兌はつだして、おしのぎあったほどだが、そのおりもまた道誉は、私財をかたむけて
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)