たら)” の例文
この五月の末ごろの或る温かい日、家のものたちと裏の山へたらの芽をとりにいつて、つい氣もちがいいまま、二三時間山で過ごした。
近況 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
その他冬青木もち、椿、楢、はぜおうちむく、とべら、胡頽子ぐみ、臭木等多く、たらなどの思ひがけないものも立ち混つてゐる。
沼津千本松原 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
たらの木の心から製したもそろの酒は、その傍の酒瓮みわの中で、かんばしい香気を立ててまだ波々とゆらいでいた。若者は片手で粟をつまむと、「卑弥呼。」と一言呟いた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
紫蕨ぜんまいであるとか、獨活うど、土筆、よめ菜、濱防風はまばうふであるとか、たらの芽、山椒の芽であるとか、菜の莟であるとか、竹の子であるとか、野蜀葵みつばであるとか、菠薐草はうれんさうであるとか
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たらの芽はうまい。これも季節の味で、その頃になれば自づと思ひ出さるゝ。そしてなか/\手に入らぬものゝ一つである。この木は竿の樣な幹で、幹にとげを持つて居る。
家のめぐり (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
その雜木のなかにわたしはたらを見付けて喜んだ。
家のめぐり (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)