棟割むねわ)” の例文
僕は早速さっそく彼と一しょに亀井戸かめいどに近い場末ばすえの町へ行った。彼の妹の縁づいた先は存外ぞんがい見つけるのにひまどらなかった。それは床屋とこやの裏になった棟割むねわ長屋ながやの一軒だった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
どこも六畳三畳二畳台所だけの棟割むねわりだが、それでいて二坪三坪の小庭がみな付いており、目隠し板に八ツ手やかえでを覗かせ、夏ならば朝顔や胡瓜をからませたりして
工場と、狭い小さな棟割むねわり住宅だけがかれらの世界であり、そこへはだれをも寄せつけなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
といっても、棟割むねわり長屋の狭い一軒、窓ぎわの一ト間が元成の仕事場だった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)