根許ねもと)” の例文
おれの家の目印になるような、あの馬鹿にの高い大樹なんだ。そして、その根許ねもとの所に親父の腰かけていた、切石がおいてあるのだ。
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
廣介の声にふと見ると、森の入口の一本の杉の木の根許ねもとに、誰が乗り捨てたのか、毛並艶けなみつややかな二匹の驢馬ろばがつながれて、しきりに草を噛んでいます。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さて警察医の観察によると、死因は無論轢死れきしであって、右の太腿を根許ねもとから切断されたのによるというのだ。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大樹の根許ねもとから、低い含み声が湧いた。そして、そこに敷き捨ててあった、腐ったこもがムクムクと動いた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たった一つ、籐椅子から一間ばかりの所にある杉の木の根許ねもとの草の間に、一束のダリヤの花が落ちていたほかには、だが、誰もそんな草花などには気がつかなかった。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)