たえ)” の例文
旅憎は溷鼠染どぶねずみぞめと云っているたえの古いどろどろしたような単衣ひとえものを着て、かしらに白菅の笠を被り、首に頭陀袋をかけていた。
貧乏神物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
麻やたえを着ていた時代には、その扇は使わずともすぐに蒸発したのが、木綿もめんになってそれをほとんと不可能にしたのである。だから夏分は肌がいつもれている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
元正げんしょう天皇、養老七年夏五月芳野離宮に行幸あった時、従駕の笠金村かさのかなむらが作った長歌の反歌である。「白木綿」はたえかじ(穀桑楮)の皮から作った白布、その白木綿しらゆうの如くに水の流れ落つる状態である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)