某寺なにがしじ)” の例文
山田る僧都の身こそ……何とやら……秋はてぬれば、とう人もなし、とんと、私の身の上でありますが、案山子かかし同様の鹿おどし、……たしか一度、京都、嵯峨の某寺なにがしじの奥庭で
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
など遣ったものだが、あえてこれは冷評ひやかしたのではない。その証拠には、小松原と一足ちがいに内を出て、女子おんな扇と御経料を帯に挟んで、じりじりと蝉の鳴く路を、某寺なにがしじへ。供養のため——
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)