枡形ますがた)” の例文
直角三角形の一番長い辺の上に乗っけた枡形ますがたの面積が他の二つの辺の上に作った二つの枡形の面積の和に等しいというのである。
ピタゴラスと豆 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
見附みつけ見附には枡形ますがたがあり、そこは長いものを通さず、やりや鉄砲や梯子はしごと間違えられるので、竹ざおなどを持ちこむのに、風呂敷をかぶせて
江戸の昔を偲ぶ (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「きょう、お城をさがる時、二の丸の枡形ますがたで突っかけて来た。石垣を曲るはずみのようにみせて、はげしくからだをぶっつけた。そして言いがかりだ」
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこでふと気をつけてみると、じぶん周囲まわりには城の枡形ますがたらしい物の影が映っていた。大手の址はあっても建物も何もないのに枡形の映るは不思議であった。
首のない騎馬武者 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ただ釣瓶つるべを上げた枡形ますがたの石井戸に桟蓋さんぶたがしてあって、美男葛びなんかずらのつるのからんでいるのが妙に心をひく。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暑いくらい照りつける陽の下に、五、六十戸ほどの家々がひっそりと静まりかえっている、だんだん下りになっている広い道にも、枡形ますがたになっている広場にも、鶏一羽、猫一匹いないのだ。
梟谷物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)