東鑑あずまかがみ)” の例文
それは立派な紙に楷書かいしょしたためられたいかめしいものには違なかったが、中には『東鑑あずまかがみ』などが例に引いてあるだけで、何の実用にも立たなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
吉田氏はまた『東鑑あずまかがみ』の桂井は枯井の形誤かと言われたが誤りとすればむしろ軽井の写し損じかも知れぬ。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこで日光一文字の銘刀と東鑑あずまかがみ一部を贈つて厚く労をねぎらひ、その日は即答をさけて、如水を帰した。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
東鑑あずまかがみ』建久四年六月十八日故曾我十郎が妾(大磯の虎除髪せずといえども黒衣袈裟けさを着す)箱根山の別当行実坊において仏事を修し(中略)すなわち今日出家を
その中に『東鑑あずまかがみ』にあるような鎌倉以前の言葉の多く這入はいっているのに気が付き
土塊石片録 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
富士講開祖角行の墓や浅間神社の小さいほこらや石塔などが立っているばかり、何が名所だと云いたくなるが、昔はどうしてこの人穴は非常に深かったものと見えて、東鑑あずまかがみにこう書いてある。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いざや子ら東鑑あずまかがみにのせてある道はこの道はるのわか草
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
闇に鎖ざされた遥かの奥からあたかも大河の流れるような轟々ごうごうという水の音が、もちろん幽かではあるけれど仄かにここまで聞こえて来るのは、東鑑あずまかがみに記されてある——仁田四郎が究め損ったという
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)