来国俊らいくにとし)” の例文
旧字:來國俊
地声を現した新九郎は、大音声と共に竹の子笠をてて、来国俊らいくにとし鯉口こいぐちを前落しに引っ掴み、ジリジリと玄蕃の前に詰め寄った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「拝領の品とみえて、目貫めぬき花葵はなあおいの紋がある、中身は来国俊らいくにとしだから、かれらのあいだでは相当ひろく知られている品だと思う」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それは来国俊らいくにとしと称する二尺八寸の大業物、無銘であったが、二つ胴も試したという、見るからに物凄い代物でした。
差料さしりょう長谷部則長はせべのりながの刀に来国俊らいくにとし脇差わきざしであった。喜三郎も羽織は着なかったが、はだには着込みをまとっていた。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それいつか、妾の愛刀をお身様に渡し、新九郎様の来国俊らいくにとしを妾が預って置いた。あれも、疾くに研師とぎしから手入れができて届いておりますわいの。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新九郎は、大円房覚明を斬って、まだ生々しい血脂ちあぶらの曇っている来国俊らいくにとしをスラリと抜き、揉み紙でひとしごきして、燈下に刃こぼれをあらためている——
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)