杢若もくわか)” の例文
これはまた余りになさけない。町内の杢若もくわかどのは、古筵ふるむしろの両端へ、ささの葉ぐるみ青竹を立てて、縄を渡したのに、幾つも蜘蛛くもの巣を引搦ひっからませて、商売あきないをはじめた。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しんとした暮方、……空地の水溜みずたまりを町の用心水ようじんみずにしてある掃溜はきだめ芥棄場ごみすてばに、枯れた柳の夕霜に、赤い鼻を、薄ぼんやりと、提灯ちょうちんのごとくぶら下げて立っていたのは、屋根から落ちたか、杢若もくわかどの。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)