朱雀門すざくもん)” の例文
「いつものとおり、男が二十三人。それにわたしと娘だけさ。阿濃あこぎは、あのからだだから、朱雀門すざくもんに待っていて、もらう事にしようよ。」
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それで、盗品のひつのなるべく軽いものを一つ背負って、強盗について行った。すると、朱雀門すざくもんそばまで行くと、そこで盗品をわけ合って、この男にも麻袋あさぶくろ一枚れた。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あるいはまた、夜な夜な、往来の人をおびやかす朱雀門すざくもん古狐ふるぎつねが、かわらの上、草の間に、ともすともなくともすという、鬼火のたぐいであるかもしれない。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すると何日か後の夕ぐれ、男はむらさめを避ける為に、朱雀門すざくもんの前にある、西の曲殿きよくでんの軒下に立つた。其処にはまだ男の外にも、物乞ひらしい法師が一人、やはり雨止みを待ちわびてゐた。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)