木食もくじき)” の例文
火の気を一切おつかいにならないで、水でといた蕎麦粉そばこに、果実くだものぐらいで済ませ、木食もくじきぎょうをなさるかたもあります。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この辺では太鼓たいこ橋といっとる。木食もくじき上人が架けたというが、たぶん、南蛮式とでもいうのだろう。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
淡き水蒸気にさえぎられ候、但し日光の工合にて、かえって鳥だけは、朝よりも明瞭に仰がれ候(側は陰に入るより)、駒ヶ岳の孤峭こしょうは、槍ヶ岳を忍ばせ、木食もくじき仙の裸形の如く、雪の斑は
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「これこそ倶係震卦教ぐけいしんけきょう、敵の眼をあざむき隠したが、悟られもせず健在健在! いざやこれより木食もくじき仙人を訊ね、教理の解釈秘法の修行を、つぶさにご教授願わねばならぬ! あら有難や!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
家全体は異様に大時代で、目をみはらせる。そして道を距てた前に民芸館と称する、同スタイルの大建築がまるで戦国時代の城のように建ちかけている。木食もくじき上人、ブレーク、アルトの歌手。
ただし人界の者どもは、わしのことをいつともなく木食もくじき仙人と呼んでいる。ところで、世界に人は多いが、倶係震卦教の文言を、解き明すことの出来るものは、わし以外には一人もない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)