有頂天うちやうてん)” の例文
若し私がこんなに彼を愛してゐないのだつたら、有頂天うちやうてんになつた彼の傍に坐つて、彼の語調や樣子を、野蠻やばんだと思つたかもしれない。
みんなの眼が、よろこびに酔つたり、有頂天うちやうてんになつて落ちつきをうしなつたやうなときに、平次の眼は反対に、秋のひぐれの沼のやうに冷たく澄むのです。
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
犬どもは主人が今日は少しも相手になつてくれないのを知ると、彼等同士二疋で追つかけ合つて、庭中を騒ぎ廻つて居た。何か有頂天うちやうてんとでも言ひたい程な快感が彼にはあつた。
うかゞふに彼の三人は有頂天うちやうてんに成りて遊び戯ふれ居しが其中の一人はかねて知りたる源八なり是は歌浦が客と聞きもとより心立こゝろだてあしき源八にて兩親のうき苦勞くらうし給ふもかれゆゑとは思へども敵にも有らぬ者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
八兵衛 有頂天うちやうてん
小さな鶯 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
アデェルは、大はしやぎで、その中を駈け𢌞つてゐた。大勢のお客の爲めの準備だの、その人たちの到着の期待だので、彼女は、もうすつかり有頂天うちやうてんになつてゐるらしかつた。