時代錯誤アナクロニズム)” の例文
昨日きのふから今日けふへ掛けては時代錯誤アナクロニズムだの、不二山の人格だの、神秘的な講義だので、例の女の影も一向あたまなかへ出てなかつた。三四郎は夫で満足である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
世界戦以後のモダアニズムの横溢おういつにつれて圧倒的に流行しはじめた洋装やパーマネントに押されて、昼間の銀座では、時代錯誤アナクロニズム可笑おかしさ身すぼらしさをさえ感じさせたこともあったが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「はあ。余っ程時代錯誤アナクロニズムの顔をしています」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
時代錯誤アナクロニズムだ。日本の物質界も精神界も此通りだ。君、九段の燈明台を知つてゐるだらう」と又燈明台が出た。「あれは古いもので、江戸名所図絵に出てゐる」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
時代錯誤アナクロニズムだ。日本の物質界も精神界もこのとおりだ。君、九段の燈明台を知っているだろう」とまた燈明台が出た。「あれは古いもので、江戸名所図会えどめいしょずえに出ている」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此青年の隊伍にまぎれ込んだ先生は、歩調に於て既に時代錯誤アナクロニズムである。左右前後に比較すると頗る緩漫に見える。先生のかげは校門のうちに隠れた。門内に大きな松がある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのなかに霜降しもふりの外套がいとうを着た広田先生の長い影が見えた。この青年の隊伍たいごに紛れ込んだ先生は、歩調においてすでに時代錯誤アナクロニズムである。左右前後に比較するとすこぶる緩漫に見える。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すまんことだがこの半月あまり母の事はまるで忘れていた。きのうからきょうへかけては時代錯誤アナクロニズムだの、不二山の人格だの、神秘的な講義だので、例の女の影もいっこう頭の中へ出てこなかった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)